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Miyamoto Lab/

Miyamoto Lab.

Columnコラム

05 研究者を目指す者へ
 研究者を目指す若者達に,今,思うところを述べたい。
 私は,幸運にも大学教員という常勤学術職に就くことができたが,これまでの経験から,研究者を志望する若手にあえて次の3点を伝えたい。
 まず,第1に覚悟である。
 どれだけ研究者になりたいのか?,研究生活をおくることができるのなら,他業種であれば享受できるであろう様々な便宜・幸福を犠牲にする覚悟があるのか?たとえ努力が一生報われなくても,研究という創造的な営みを通して恍惚としていられるか?・・・ということを問いたい。こうした問いに躊躇なく「YES」と答える覚悟があるのなら,常識的な生き様にこだわることなく,芸術家と同じように,創造性あるいは生産性を追求することができよう。勿論,それが成功するか否かは,他のあらゆる人間の営みと同じで,本質的には運次第という側面があるのは言うまでもない。
 第2は,性格である。
 当たり前のことだが,価値のある研究成果を挙げることは,至難の業である。私自身,得られた成果の十中八九は平凡なもので,ヒットが出るのは稀である。まして,本塁打など打ったこともない。しかし,昨今の若手研究者による競争時代では,自信がなくても,貧困でも,精神・体力の限界でも,打席に立ち続けなければ,安打も本塁打は生まれはしない。よほどの才能に恵まれた者を除けば,多くの若手がそうした試練を乗り越えるためには,他者から見ると馬鹿か無責任とも思えるほどの「楽天的な性格」が必要であると,私自身の過去を振り返って思う。換言すれば,人生を慎重に考え,将来のことを前もってどうこうと考えているような人間には,研究生活は不向きであろう。
 第3は,海外へ踏み出すことである。
 本気で研究者を目指す覚悟ができたら,博士課程かPD生活の早い時期に海外へ飛び出し,世界の超一流研究者のもとで,武者修行することを強く勧めたい。第一線で輝かしい業績を挙げる研究者が,世間一般の常識人と比べて,「人生に対する考え方や物事への打ち込み方が,どれほど常軌を逸したものであるか?」を,実際に目で見て,肌で感じて欲しい。また,超一流の研究者のもとには,世界中から野心と才気溢れる若者が数多く集まり,日夜,切磋琢磨している。その中で,勝ち残るには,大変な努力が必要である。それを経験するか否かの違いが,PDあるいは後の教員生活を大きく左右するであろう。
 夢への滑走路は,長く過酷なものである。だからこそ,夢を手にした喜びも大きい。

The mind is not a vessel to be filled but a fire to be kindled.
知性とは,満たすべき器ではなく,燃やすべき炎である)

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