Columnコラム
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件から,20年が過ぎた。 その事件の翌週,私は米国留学のために, 厳戒体制のLos Angelesに降り立った。 武装した州兵しかいない,あの物々しい空気と息苦しさは, 今も記憶に新しい。 犠牲者の遺族や救助にあたった消防士は, 家族や同僚を失った悲しみを克服しつつも, 地獄のような惨劇の記憶から,今も逃れられずにいる。 ニューヨークに住む人々は,空を見上げるたびに 事件がもたらした空白の時を,鮮明に思い起こす。 アメリカはあの日を境に,テロという「見えない敵」との戦争に突入した。 マンハッタンを覆った黒煙は晴れたが, 戦雲は今も中東やアフガニスタンに暗く垂れ込めている。 この20年,人々は衝撃的なテロの傷跡を癒しながら, 事件の意味を探ろうとしてきた。 それは明確なようでいて,瓦礫の山に埋もれた 遺留品のように,見えづらい。 9・11は,アメリカに何をもたらし,世界をどう変えたのか? その答えを探す旅は,これからも続く。 The mind is not a vessel to be filled but a fire to be kindled. 知性とは,満たすべき器ではなく,燃やすべき炎である) |