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土壌観測応援コミュニティ
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総合評価

 土を取り扱う多くの学術分野において,研究者・技術者らに愛用され,広く利用されてきた土壌環境測定法は「ケーブルテスター(例えば,TDR100やTDR200)を利用した時間領域反射法(TDR)」です。しかし,ケーブルテスターは非常に高額であるうえに,それを使いこなすには高い専門知識が要求されるため,実用性に欠けるという一面があります。そのため,最近は,ケーブルテスターの機能を内蔵したTDRセンサが,世界中で流通しています。
 当コミュニティでは,「ケーブルテスターを利用した時間領域反射法(TDR)」を基準(信頼性が高く,実用性は中程度(高度な専門性を要するため))と位置づけ,「信頼性」と「実用性」を総合的且つ相対的に評価しました。なお,海外製品を含むため価格は考慮せず,あくまでも先述の2点を評価軸としました。評価の詳細は,個別レビュー をご参照下さい。 【参考資料】
1) Rhuanito Soranz Ferrarezi, Thiago Assis Rodrigues Nogueira, and Sara Gabriela Cornejo Zepeda (2020): Performance of Soil Moisture Sensors in Florida Sandy Soils, Water 12, 358. doi:10.3390/w12020358
2) 上村将彰, 宮本英揮ほか1名(2020): TDRとTDTによる豊浦砂の水分・電気伝導度計測の性能比較, 農業農村工学会論文集 88(1):Ⅰ_117-Ⅰ_124.
3) 中島綾美, 宮本英揮ほか3名(2019): 火山灰斜面における土壌水分および三軸加速度の同時モニタリング, 土壌物理学会大会講演要旨集, 110-111.
4) 宮本英揮ほか2名(2017): デジタルTDTセンサーを用いた土壌の水分・電気伝導度の同時計測, 地下水学会誌 59(1): 11-19.
5) 宮本英揮(2016): 第57回土壌物理学会シンポジウム総合討論「土壌水分センサー技術情報の共有へ向けて」, 土壌の物理性 132: 41-44.
6) 井上光弘(2016): ユーザーから見た市販マルチセンサーの測定精度の評価, 土壌の物理性 132: 31-36.
7) 宮本英揮(2011): 時間領域透過法, 農業農村工学会誌(水土の知) 79(6): 36.
8) 伊藤祐二, 宮本英揮ほか3名(2010): 生物環境調節学分野におけるECH2Oプローブの適用事例, 土壌の物理性 114: 33-36.

評価方法

 主に,①再現性の高い均一流体を材料とする評価方法と,②圧力制御用チャンバーを利用した非破壊連続土壌測定の2種類を併用し,体積含水率の測定精度を中心に各センサの性能評価を行います。詳細は,管理人にお問い合わせ下さい。

均一な標準流体(12種)を供試材料とした水分計測性能の評価

 12種類の異なる流体における体積含水率・誘電率の出力値(3反復/材料)と,別途,ネットワークアナライザを用いた誘電分光法により求めた各流体の複素誘電率の実数部スペクトルとを比較することにより,誘電率の測定精度や,世界標準式「Topp式」とのずれに基づき体積含水率の測定精度等を評価します。センサとの完全密着や材料の均一性が期待できる流体を供試材料とすることで,土壌において認められがちなばらつきを排除し,且つ比較的短時間でセンサ特性を評価できるのが,この手法の最大の利点です。

土壌環境制御用耐圧チャンバを利用した水分・EC計測性能の同時評価

 圧力制御機構を有するアクリルチャンバー(内径15cm)内に充填した土壌内部にセンサを設置し,土壌中の体積含水率・溶質濃度等を人工的に制御することによって,体積含水率や間隙水のEC(つまり,溶質濃度)の異なる各種条件におけるデータを一括取得できる再現性の高い評価手法です。ただし,体積含水率の変化によって膨張・収縮する粘土質土壌には適用できないので,それが生じない豊浦標準砂や真砂土等の供試材料として利用します。また,チャンバーによって調整できない低水分条件に限り,他の手法を併用する場合があります。